『アンタッチャブル』
原題:The Untouchables
1987年製作/アメリカ映画/上映時間:119分/1987年10月3日日本公開
監督:ブライアン・デ・パルマ
出演:ケヴィン・コスナー
チャールズ・マーティン・スミス ほか
禁酒法時代の1930年代のアメリカ・シカゴに実在したギャング、アル・カポネとどんな買収にも応じない捜査官エリオット・ネスとの死闘を描いたケヴィン・コスナー主演のアクション映画です。
監督は『スカーフェイス』などのブライアン・デ・パルマ。
1988年・第60回アカデミー賞において、作曲賞、衣装デザイン賞、美術賞にノミネート。
ショーン・コネリーが見事、最優秀助演男優賞を受賞しております。
あらすじ
1930年、禁酒法下のシカゴ。財務省から派遣された特別捜査官エリオット・ネス(ケヴィン・コスナー)は街を牛耳るギャングのボス、アル・カポネ(ロバート・デ・ニーロ)に敢然と戦いを挑む。ベテラン警官のマローン(ショーン・コネリー)を始め、射撃の名手ストーン(アンディ・ガルシア)、税理士のウォレス(チャールズ・マーティン・スミス)といったメンバーに支えられ、ネスの捜査が始まる。しかし巨悪カポネの差し向けた殺し屋によって、ひとり、またひとりと犠牲者が……。
(映画.comより)
『エレファント・マン』(1980年)やテレビシリーズ「ツイン・ピークス」で知られる映画監督のデヴィッド・リンチ氏が78歳で死去されたことが16日、遺族のFacebookで公表されました。
・・・自分は申し訳無いのですが、それほどリンチにハマってはおらず、あまり多くの作品は観ておりませんが、「ツイン・ピークス」の独特の世界観など卓越した才能の持ち主だと思っております。
追悼の意味を込め作品を・・・とも考えたのですが、実はかなり前からこの日は『アンタッチャブル』にしようと思っておりましたので、それはまたの機会で。
心からご冥福をお祈りいたします。
かつてテレビシリーズとして人気を博した「アンタッチャブル」を劇場映画化したアクション巨編です。
本日、1月18日はケヴィン・コスナー、70歳のお誕生日です。
お祝いの気持ちを込めまして、できれば新作が良かったのですが、2021年から新作が無く(これ、ちょっと気になります)出世作となった本作を選ばさせていただきました。
HappyBirthday!
本作の内容とはあまり関係無いことかもしれませんが、1980年代後半から1990年代前半のハリウッド映画の大ヒット作品のほとんどがきれいに120分(2時間)以内に収まっているものが多いです。
具体的なものをあげますと・・・
1987年『危険な情事』119分。
1989年『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』108分。
1989年『フィールド・オブ・ドリームス』107分。
1990年『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3』118分。
1990年『ホーム・アローン』102分。
1990年『プリティ・ウーマン』119分。
1991年『羊たちの沈黙』118分。
1992年『ホーム・アローン2』120分。
などなど。
もちろん上映時間が短ければ映画館での上映回数が増え興行的にもいいですし、フライト時間にピッタリということで航空会社への売却という、これもハリウッド映画の重要な収入源と言えます。(ただし、ハイジャックなどのパニックものは売れません)
それと、今の若い映画ファンはおそらくご存じ無い理由で、どうしても120分に収めなければというものがありました。
それが、当時劇場収入以上に重視されていたレンタルビデオでの収益です。
当時のビデオテープ、VHSの平均録画時間が120分。
何とかそれに収まるよう作られていたことは間違いありません。(もちろん1部の映画は120分以上のものがありますが)
VHSももちろん120分以上の録画時間のもの、160分、1番長いので180分というものもありましたが、同じテープのケースの大きさで時間を長く録画できるようにするためにはテープを120分のものよりかなり薄くしなくてはならなかったのです。
180分のテープは非常に薄く、巻き戻し(←若い人知っているかな?)したり、巻き戻し再生するとテープが切れることがよくありました。
・・・しかし、そんな映画会社の思惑など「知ったことか!」とばかりに181分と3時間超え、当時廃れていた西部劇、ネイティヴアメリカンを題材とヒットしない要素を取り入れ、その真逆を行く年間興行成績2位(さすがに『バットマン リターンズ』には敵わなかったですが・・・)の大ヒット作品『ダンス・ウィズ・ウルブズ』という傑作を作ったのが本作主演のケヴィン・コスナー。
この『ダンス~』は1991年・第63回アカデミー賞において、最優秀作品賞を含む計7部門を受賞。
この作品から長編の作品の製作が増え始めました。
ちなみに『ダンス~』は50分の追加シーンを加えられた『4時間アナザーヴァージョン』なるものがありますが、個人的にはこちらがオススメ。
今回、4K Ultra HD Blu-rayで観たのですが、初めて映像特典を観ることができました。
パラマウント映画75周年記念の作品で、かなりの製作費の映画だと思っていたのですが、予算は少なめだったようで、ショーン・コネリーの出演はすぐに決まっていたそうですが(イギリス人俳優はギャラが安いらしいです。コネリーは正確にはスコットランドですが)、アル・カポネを演じたロバート・デ・ニーロは「そんなスターのギャラは払えない」と幹部から反対されたそうです。
しかし、デ・ニーロ以外カポネを演じられる俳優はいないと思ったデ・パルマ監督は「彼をキャスティングしなければ自分も降りる」と何とか幹部を説得させることに成功。
撮影期間は2週間という契約でデ・ニーロも出演に承諾。
しかし、やはりギャラは高額で、時間給では無かった・・・と言うことですね。
当時無名に近かったケヴィン・コスナーのエリオット・ネス役には幹部は大賛成だったようです。
ですが、デ・パルマは「彼に主演が務まるのか?」という不安があり、本作前にコスナーと仕事をしたローレンス・カスダンやスティーヴン・スピルバーグの意見を聞き、「彼は間違いなくスターになる」との返答でネス役に決めたそうです。
デ・パルマは過去にも『キャリー』でシシー・スペイセク、ジョン・トラヴォルタ、『スカーフェイス』ではミシェル・ファイファーと言った無名俳優をスターに押し上げた実績もあり、コスナーも本作の大ヒットで一躍大スターになります。
衣装は当時の撮影技術では実際の色の質感が映せないことがあり、ネスの着るスーツがやや暗めなので、できるだけいい質感を出したいと言うことでイタリアの高級スーツメーカーのアルマーニが衣装を制作。
しかし、「ギャングでは無く警官が大恐慌の時代にそんな高価な服を着るとはバカげている」とショーン・コネリーはアルマーニの衣装を着ることを拒否し、自前の服で出演。
もしこれから観る機会があるようでしたら、コネリーの衣装にも注目してください。
コネリーご本人の自前の衣装です。
「目には目を歯には歯を」という言葉がありますが、「ナイフには銃を。ケガ人を出されたら死人を返せ」とシカゴでカポネとの戦争に勝つ秘訣を伝授するマローンとネスの師弟のような関係は胸を熱くするものがあります。
禁酒法。
今思うとバカげた法律ですが、そんな法律を守り、これ以上罪のない人の血を流させないため、立ち上がった男たちの物語。
エンニオ・モリコーネのすばらしい音楽。
スローモーションを駆使したデ・パルマの見事な演出もあり、今観ても本当に面白い映画だと思います。
最後のエリオット・ネスのセリフもいいですね。
ちなみに書くまでもございませんが、日本のお笑いタレントと本作は一切関係ありません。
オリジナル予告編(日本語字幕はありません)